【サンプルコードもあり】大学受験予備校の教材作成におけるLaTeX活用 数学の テキスト数十冊をTeXで作ってきて

大学受験の予備校でのテキスト、高校で使うテキスト、何を使って作りますか?実際に僕は予備校で指導をしていますが、高校の先生には明らかにWordを使って数学のプリントを作っている先生がいます。生徒が持ってきたプリントを見ているとすぐに分かります。でも、僕はズバリLaTeXを使うことをオススメします。この記事では、

  • 教材作成でLaTeXを使うことのメリットがわかる
  • LaTeXで教材作成をする際のポイントがわかる
  • サンプルコードをコピペしてテキストを作れる

ようになっていますので是非最後までご覧ください。解説は興味ないからとにかくサンプルコードがほしい!って人は最後の「サンプルコード」に進んでくださいね。また、今回はIT日記に投稿しますが僕は「いるか予備校」というWebサイトも運営しています。こちらも合わせてご覧ください。

数学のテキストを作るならLaTeX

数学のテキストを作るなら絶対にLaTeXです。まずは、LaTeXを使うことのメリットとデメリットも含めて、その理由を解説します。

数式を組版するならLaTeX

Wordでも、最近はLaTeXと同じくらい数式を駆使できるようになってきています。以前の、全く使い物にならなかったWordの数式とは違います。使い物になるようにはなったものの、使いやすさは全然違う。Wordで数式を打っている先生は、いちいちマウスでポチポチと操作をしているのでしょうがそんな面倒なことをしていては、特に50ページ以上に及ぶ予備校のテキストとなると日が暮れてしまいます。

少なくとも、教員免許を取っている以上、大学での教職課程でLaTeXを扱うことがほとんどだと思います。大学での論文もLaTeXで書くことが基本中の基本です。そもそもWordは数式を打つことを前提としたデザインになっていないのです。

LaTeXを使うデメリット

先にデメリットから解説しておきましょう。デメリットとしてあげられるのは、

  • 環境構築が面倒
  • LaTeXはコマンドを覚えなくてはならない
  • 直感的に操作することができず、プリアンプルなどを書かねくてはならない

ということでしょう。まず、「環境構築する時間がない、だからできないんだ」って言い訳をしている先生。それは単なる言い訳です。今ではoverleafやCloud LaTeXなどという、環境構築なしでクラウドベースでLaTeXを扱えるサービスがあります。特にCloudLaTeXは大学受験では定番中の定番の月刊誌「大学への数学」の組版にも使われているceo.styというスタイルファイルが使用できるため、初心者でもそこそこの品質のテキストを組版することが可能です。

LaTeXはコマンドを覚えなくてはならない。確かにそうですが、少し使っていけばすぐになれます。大抵が読みのアルファベットそのものなので、途中からはコマンドリストを見なくてもコマンドが大抵予想できてしまうほどです。

最後に、プリアンプルなどが面倒だと。これは一度書いてしまえばあとはコピペです。一度で完全に終わりではなく、少しづつ僕も進化させて使いやすいようなプリアンプルに変えつつありますが、でも面倒なことを書かなくてはならないのは最初だけ。なれてしまえば、Wordで毎回毎回ページ設定をしているよりかなり楽ちんです。

LaTeXを使うメリット

LaTeXを使うメリットとしては、

  • 数式を含んだ文書がかなり見やすくなる
  • なれてしまえば、マウスを使って操作するより早い
  • コマンドベースであるため、Wordと比べてマクロなどが組みやすい

ことなどが挙げられます。

数式を含んだ文書は、Wordでも書くことができます。しかし、Wordで作成するとフォントの揺れをはじめとしていろいろと問題が起こる。=の位置が縦に並ぶように設定することも難しい。などなど…僕自身、Wordでの数式を含む文書作成は3年ほど前に脱したのでこれくらいしか挙げられませんがビジュアルの問題もいくつかあります。

そしてさらに大きいのが「コマンドを使う」ということ。コマンドを覚えなくてはならないということをデメリットとして挙げましたが、逆にいうとある一定のコマンドさえ覚えてしまえばあとはキーボード入力で色々と進めることができるわけです。

LaTeXを使ったテキスト作成のTips

ここからはLaTeXを使って実際に教材作成をしていく上でのコツを紹介します。これらのTipsを基に、僕が実際に普段利用しているサンプルコードを巻末に載せましたので、こちらも合わせてご覧ください。

表紙やページ配置もうまく作ろう

表紙をうまくLaTeXで作る。中には、表紙は流石に会社で統一したものがある、って方もいるかもしれませんが、僕の会社は丸投げなので表紙も固定のものはありません。

表紙に僕が使っているのはこんな感じ。

ただ単に講座名だけではちょっと物寂しいので講座名以外の情報も入れています。横いっぱいの直線や点線などのデザインは、特別なパッケージなどは使っていないのでこのままコピペしてコンパイルすることでそのまま表紙として使えます。また、LaTeXのjsbookでデフォルトとなっている表紙とは違うため、ページ番号の「1ページ目」となってしまうことを防ぐために、表紙はpagestyleをempty(ページ番号を振らない設定)とし、次のページが1ページとなるように後処理もしてあります。

さらに少し工夫しているのがページの配置。奇数ページと偶数ページで分けて、偶数ページは左側の余白が狭くなるよう、奇数ページは右側の余白が狭くなるように設定しています。こうすることで、ページのホッチキスする部分をやや広めに確保することができます。生徒はなかなか気づかないかもしれませんが、おそらくこれをやっているのとやっていないのでは使いやすさが変わってくることでしょう。

こういった、ちょっとした配慮も毎回使うテキストには欠かせないのです。

マクロを有効活用

僕は教材作成において、マクロを有効活用しています。Wordではなかなか使いにくいマクロ、コマンドをベースとして入力していく組版ソフトだからこそできることです。

僕の場合、問題の初めに“\toi“を入力するようにしています。こうすることで、問題番号を自動で振ってくれるのです。また、マクロの定義で”thechapter”を定義しておけば、チャプターの番号を入れることもできます。僕が普段、テキストを作成する際のデフォルトは、

「演習問題2-3」

のような形で、

「演習問題『講数』-『講の中での問題番号』」

としています。これも、たった4文字“\toi”だけで自動で入力してくれます。なお、プリント類の際や場合によっては「問題3」のように、「問題『通し番号』」としています。この場合はマクロを少し変えればいいだけです。問題をLaTeXに打ち込む際は“\toi”で問題を始めておき、そのコマンド丸ごとコピーすることでプリントとテキストとの間での問題の移植も簡単にできるようになっています。

これ以外にも、「出典コマンド」なども使っています。引数を複数設定することで、プリアンプルのマクロ定義の部分だけで「大学名のみ」や「出題年度を含む」、「掲載問題集を含む」など自由自在に設定できます。また、ソースを確認すればどこからとってきた問題かもすぐにわかるようになっています。

テキスト・テストそれぞれでプリアンプルをテンプレ化

これらのマクロ等を設定する場合、毎回毎回マクロを入力していては日が暮れます。もちろん僕は、ある程度プリアンプルを固定化し、テンプレートとしています。

プリアンプルを統一化することで、毎回同じコマンドを入力してテキスト執筆を進めることができるようになるのです。

クラウドサービスも活用しよう

僕は普段の作成作業では、MacにインストールしたMacTeX(エディタはTeXShop)を使っています。ただ、これがなかなか環境構築が難しい。別の記事で環境構築についてもご紹介していますが、結構大変。さらに、現時点で無料では、iPad上に実用的なLaTeX環境を整備する方法がありません。そこでクラウドサービスも是非とも活用したいところです。

MacならMacTeX(TeXShop)、WindowsならTeXLive

まずはローカル環境でTeXを使用する場合。windowsならTeXLive、MacならMacTeXがスタンダードです。

TeXLiveはMacでも利用できますが、MacでTeXを使うならTeXShopの方が使いやすい。そしてデザインもいいですので、TeXShopをオススメします。「美文書作成入門」という本がありこの本についているディスクを使うと簡単にインストールすることができますが、Mac OS BigSurではディスクの中にあるデータを一旦、ローカル環境に移さないと使えないようです。

MacでのTeX環境構築についてはこちらの記事でも紹介していますのでご覧ください。

海外製クラウドベースのLaTeXは「overleaf」

海外製で、早くから存在するクラウドベースのLaTeXが「Overleaf」。Overleafは共同プロジェクトなども作成することができます。ちなみに、僕が現在所属している予備校では、Overleafを使ってテキスト作成を行なっています。「共通テスト対策」などはOverleaf上で並行して作成、それ以外のテキストもOverleaf上で共有することによって他のテキストから問題を引っ張ることができるようになっています。

このOverleafは、海外ではかなりスタンダードで、学会論文のテンプレートなども用意されています。逆にいうと、大学受験の教材作成などはあまり想定されていません。まあ、海外製のサイトですからね。大学受験のための教材作成なら、OverleafよりCloudLaTeXが便利でしょう(僕たちの予備校は早くからOverleafを使っていたので、いまだにOverleafのままです…)。

国産クラウドベースのLaTeXは「CloudLaTeX」

僕は自分が所属する予備校でOverleafを使ってるので今でもOverleafを使っているのですが、「大学受験のための教材作成に使います」と言われたらオススメするのがこちら、CloudLaTeXです。

CloudLaTeXは日本発祥のクラウドベースのLaTeXサービスです。最近では、安田亨先生が作成した、東京出版の「東大数学で1点でも多く取る方法」などでも使われるceo.styというスタイルファイルが使えるようになりました。これは、解答などのマークが使えるパッケージになります。このパッケージを使うとかなり数学のテキストらしい文書が簡単に作ることができます。

日本発祥であることもあり、日本語環境を導入するのが簡単、Overleafと比べて日本語に拙さがないなどといったメリットがあります。これからクラウドベースでLaTeXを使おうというのであれば圧倒的にCloudLaTeXがオススメです。

サンプルコード

最後にサンプルコードを載せておきます。このコードは好きにコピペして使ってもらって結構です。

サンプルコードはコピペして使っていいですよ

\documentclass[uplatex,dvipdfmx,b5j,openany,autodetect-engine,dvipdfmx-if-dvi,ja=standard,11pt]{jsbook}\usepackage{geometry}\usepackage{amsmath}\usepackage{amssymb,otf,tcolorbox}\usepackage{fancyhdr,enumitem,ascmac,multicol,wrapfig}\usepackage{newtxmath,newtxtext}\usepackage{tabularx}\usepackage{graphicx}\usepackage{amssymb,otf,tcolorbox}\usepackage{titlesec,titletoc,color,thmbox,multicol,ulem}\usepackage{pgf,tikz,pgfplots}\newcolumntype{C}{>{\centering\arraybackslash}X}\usetikzlibrary{shapes.callouts}\usetikzlibrary{arrows}\renewcommand{\chaptermark}[1]{\markright{\thesection \hspace{1em}#1}}\renewcommand{\baselinestretch}{1.1}\pagestyle{myheadings}%ページスタイル設定(全ページ編集指定)\markboth{}{}%ヘッダーの設定\renewcommand{\prechaptername}{第}\renewcommand{\postchaptername}{講}%チャプター名の設定\newcommand{\Frac}[2]{\dfrac{\,#1\,}{\,#2\,}}%線の長い分数\newcounter{toi}[section]\newcommand{\toi}{\refstepcounter{toi}\hangindent=2em\noindent {\bf \large 演習問題 \thechapter-\thetoi} \indent}%演習問題コマンド\newcommand{\htoi}{\refstepcounter{toi}\hangindent=2em\noindent {\bf \large 必修問題 \thechapter-\thetoi} \indent}%必修問題コマンド\newcommand{\rtoi}{\refstepcounter{toi}\hangindent=2em\noindent {\bf \large 復習問題 \thechapter-\thetoi} \indent}%復習問題コマンド\newcounter{rei}[section]\newcommand{\rei}{\refstepcounter{rei}\hangindent=1em\noindent{\bf 例題\therei}\hspace{1em}}%例題コマンド\newcommand{\ans}{\fbox{{\bf 解答}}}%解答記号\newcommand{\hon}[1]{}%出典問題集コマンド・問題タイプ等 テキスト本体には掲載しないがメモとして残しておきたい内容\setlist[enumerate,1]{label=(\arabic*),topsep=0pt,parsep=2pt,partopsep=0pt,itemsep=0pt,leftmargin=3em,labelsep=1em}%enumerate第1レベルの設定\newcommand{\dan}[2]{\begin{multicols}{#1} #2 \end{multicols}}\multicolsep = 3pt%段組み短縮コマンド\newcommand{\op}[1]{\begin{thmbox}[M,leftmargin=3\zw,thickness=0.8pt]{\colorbox[gray]{0.85}{\textgt{ワンポイント}}}#1\end{thmbox}}%ワンポイントコマンド\newcommand{\cm}[1]{\begin{thmbox}[M,leftmargin=3\zw,thickness=0.8pt]{\colorbox[gray]{0.85}{\textgt{コメント}}}#1\end{thmbox}}%コメントコマンド\newcommand{\sourse}[2]{\begin{flushright}出典:{#1}年度~{#2}\end{flushright}}%出典コマンド\newcommand{\note}{\newpage\begin{center}\Large{N~~O~~T~~E}\end{center}\newpage}%NOTEコマンド%===========================================================%プリアンブルおわり%===========================================================\begin{document}%===========================================================%ここからが表紙%===========================================================\newgeometry{top=1cm,left=5mm,right=1cm,bottom=1cm}\thispagestyle{empty}\hrulefill%最上部のライン\vspace{5mm}\hspace*{10mm}\Large{2021年度 1学期}%開講年と講座種別\hspace*{3mm}\dotfill%ドットライン(左3mm空ける)\hspace*{5mm}\Huge{{\bf 【講座名】}}%ここが講座名\begin{flushright}\LARGE{}%副題があればここ\end{flushright}\vfill\begin{flushright}\Large{{\bf 【予備校名】}}\end{flushright}\hrulefill%最下部のライン\normalsize%フォントサイズのリセット\restoregeometry%余白設定のリセット\newpage\thispagestyle{empty}\newgeometry{twoside,top=20truemm,bottom=25truemm,left=30truemm,right=20truemm}~\newpage\setcounter{page}{1}%===========================================================%ここまでが表紙と後処理%===========================================================%内容はここから\chapter*{はじめに}【ここに「はじめに」の内容】\vspace{10mm}\begin{flushright}2021年8月 テキスト作成 【作成者名や作成団体などを入力します】\end{flushright}\newpage\chapter*{講義の進め方とテキストの構成}【ここに講座を行うにあたって書いておきたいことを入力します】\vfill\noindent{\bf テキストで使う記号}\begin{tabular}{cl}$\ast$ & 比較的難しい問題や難しい事項。主に補充問題で使用している。\\$\clubsuit$ & 大学入試共通テストでも重要になる内容。センター試験で頻出だった内容。\\$\Re$ & 既に学習した事項。忘れている場合は前に戻って復習しよう。\\$\dagger$ & やや難しい内容。難関大入試で問われることが多く、意欲のある生徒向けの内容。\\$\ddagger$ & 大学の数学の内容だが理解に役立つ内容。完全に理解する必要はない。\end{tabular}\newpage%目次============================================\titlecontents{chapter}[0pt]{}{\thecontentslabel \hspace{5mm}}{}{\titlerule*{・}\makebox[2mm][r]{\thecontentspage}}%目次タイトルの設定 titletoc\titlecontents{section}[0pt]{}{\thecontentslabel \hspace{5mm}}{}{\titlerule*{・}\makebox[2mm][r]{\thecontentspage}}%目次タイトルの設定 titletoc\tableofcontents%目次は{n}でn=0でchapter階層まで%============================================\newpage%ここからが内容\chapter{【各講のタイトルはchapter階層で書く】}\toi\hon{剰余で分類}$7^{n}$ を 6 で割った余りは 1 であることを証明したい.\begin{enumerate}\item 数学的帰納法を用いて証明せよ.\item 二項定理を用いて証明せよ.\end{enumerate}\sourse{2020}{豊橋技科大・前期}\vfill\toi\hon{領域の問題}放物線 $y=x^{2}+a x+b$ により, $x y$ 平面を 2つの領域に分割する.\begin{enumerate}\item 点 (-1,4)と点 (2, 8) が放物線上にはなく別々の領域に属するような $a,~b$の条件を求めよ。更に, その条件を満たす$(a,~b)$ の領域を $a b$ 平面に図示せよ.\item $a$, bが (1)で求めた条件を満たすとき, $a^{2}+b^{2}$ がとり得る値の範囲を求めよ.\end{enumerate}\sourse{2015}{愛知教育大}\vfill\newpage\toi\hon{面積計算}$a,~b$ を定数とし,実数\[f(x)=\int_{0}^{x}\left(t^{2}+a t+b\right) dt\]が$\displaystyle x=-\frac{1}{3}$および$x=1$で極値をとるものとする.~このとき,~次の問に答えよ.\begin{enumerate}\item 定数 $a$ の値を答えよ.\item 関数$f(x)$の極小値を答えよ.\item 関数$f(x)$ の極大値を答えよ.\item $m$ が(2)における極小値であるとき,~曲線$y=f(x)$ と直線 $y=m$によって囲まれた部分の面積を答えよ.\end{enumerate}\sourse{2020}{防衛大・理工}\vfill\note\end{document}
【これが表紙】
【真っ白なページ;左右を揃えるために挿入してあります】
【テキストは毎回労力を使うので、「はじめに」で、このテキストの講座で身につけて欲しいことを明示している】
【目次】
【ここから内容】
【内容2ページ目】
【ページ配置を考えて、NOTEを入れる】

各コードの使い方

いろいろとマクロを作ってあるので、そのマクロと使い方をご紹介していきます。

チャプター番号を「第◯講」と出るようにする

僕はテキストは「第1講」「第2講」「第3講」と、60分講義で講義ごとに番号を振っています。この番号を自動で振るためのコマンドです。

chapterでタイトルを作る
\renewcommand{\prechaptername}{第}\renewcommand{\postchaptername}{講}%チャプター名の設定

TeXには元々、チャプターやセクション、サブセクションなどの優秀なチャプター機能が備わっています。僕の場合、「第◯講」はチャプター設定にしてあります。つまり\chapter{今までの復習}としてコンパイルすると「第1講 今までの復習」と表示されます。

線の長い分数をコマンド化しておく

LaTeXで数式を扱っていくとき、特に体裁などを綺麗に揃えておきたいテキストなどで困るのが分数。インライン(文章の中など)で、2つの$マークに挟んで分数を入力すると、分数が縦に圧縮された状態で潰れてしまいます。

この解決策というか、これを回避する方法として公式にあるのが\displaystyleというコマンドです。$\displaystyle \frac{1}{2}$などと入力すれば、分数が潰れない形で入力することができます。

が、段々とこれが面倒になってくる。ということで僕は普段から、マクロをフル活用して\displaystyleというコマンドを入力しなくても分数が潰れないように設定しています。今回、僕がサンプルコードとして公開したコードを使用する場合は、

$\Frac{1}{2}$などと言った具合に、分数のコマンドの最初の文字Fを大文字で入力すると使うことができます。LaTeXのコマンドは大文字と小文字を区別します(これでエラーを吐くことがたまにありますが、\ajRomanコマンドのように、特定の文字を大文字にしたりすることで汎用性のあるコマンドも実現しています)。それをフル活用して、大文字で入力することにより簡単に分数を入力できるように配慮しています。

\newcommand{\Frac}[2]{\dfrac{\,#1\,}{\,#2\,}}%線の長い分数

問題番号を自動で振るコマンド

講義で使うテキストを作っていると自ずとぶち当たる「問題番号入力」。これ、かなり面倒ですよね。

僕も最初の頃は、手作業で番号を振って、途中で問題を入れ替えたり追加したりしたら番号を入れ替えて…というふうにやっていたのですが、マクロを使うとかなり楽になります。それどころか、他のテキストに問題を流用する際の汎用性が高くなります。

ここでは\newcounterというマクロを使います。文字の通り「カウンター」を設定します。そして、僕が作るテキストの大半は講義で扱う「演習問題」、講義では扱わないけど必要な「必修問題」、講義で扱った問題の類題である「復習問題」で構成しているので、その3種類のいづれかが出てきたらtoiというカウンターのカウントを行うという設定にしてあります。また、オプションとして[section]をつけてあるので、セクションごとにカウンターはリセットされます。コマンドの表示される部分は\noindent {\bf \large 演習問題 \thechapter-\thetoi}とし、「演習問題3-1」などのように、ダッシュの前に講数が、ダッシュの後に問題番号(ここにカウンターの番号が弾き出される)が表示されるようになっています。

したがって、\toiと書いてから問題文を始めれば、タイプセットした際に自動で番号が振られます。もちろん、タイプセットの際に自動でカウントするカウンターなので問題を入れ替えたりしても自動で順番に振り直してくれます。また、他のテキストに移植する際も、問題番号のコマンドごと移植すればそのテキストに合う形で移植できます。

\newcounter{toi}[section]\newcommand{\toi}{\refstepcounter{toi}\hangindent=2em\noindent {\bf \large 演習問題 \thechapter-\thetoi} \indent}%演習問題コマンド\newcommand{\htoi}{\refstepcounter{toi}\hangindent=2em\noindent {\bf \large 必修問題 \thechapter-\thetoi} \indent}%必修問題コマンド\newcommand{\rtoi}{\refstepcounter{toi}\hangindent=2em\noindent {\bf \large 復習問題 \thechapter-\thetoi} \indent}%復習問題コマンド\newcounter{rei}[section]\newcommand{\rei}{\refstepcounter{rei}\hangindent=1em\noindent{\bf 例題\therei}\hspace{1em}}%例題コマンド

問題集タイプのテキスト(自習用テキストなど)を作成する際は、プリアンプルにある演習問題のコマンドを

\newcounter{toi}\newcommand{\toi}{\refstepcounter{toi}\hangindent=2em\noindent {\bf \large 問題\thetoi} \indent}

と変更することで、通番で「問題15」などと表示されるようになります。プリアンプルをちょっと変えるだけですぐに問題番号のスタイル全てを変更できるのも大きなメリットです。

解答記号

めっちゃ単純、解答のコマンドです。僕は、解答が始まるところに四角囲みで「解答」と入れています。

もちろん、これだけだったら毎回\fbox\bfを入力して「解答」のマークを作成してもいいのですが、めんどくさいのでansコマンドを作成しました。これを応用すれば他の繰り返し使う記号も簡単に作れるのでこの記事でも解説を一応書きました。

\newcommand{\ans}{\fbox{{\bf 解答}}}%解答記号

出典大学や自分のためのメモコマンド

続いては出典のコマンドです。大学受験対策のテキストを作成していると出典大学を書くことが多くあります。また、何かしら問題集等を参考にして作成することが多いですから、自分のノート用に出典の問題集も打ち出せるようになっておいた方が楽です。

そこで、僕は「sourse」と「hon」という2種類のコマンドを使っています。原則としてsourseコマンドは生徒に配布するテキストにも打ち出します。一方、honコマンドは自分用のメモとして、自分の手元に残すメモにのみ打ち出します。

出典大学に関するコマンドは引数を2つ使っています。\sourse{2021}{東京大学}と入力することで、「出典:2021年度 東京大学」と右揃えで打ち出されます。

\newcommand{\sourse}[2]{\begin{flushright}出典:{#1}年度~{#2}\end{flushright}}%出典コマンド\newcommand{\hon}[1]{}%出典問題集コマンド・問題タイプ等 テキスト本体には掲載しないがメモとして残しておきたい内容

問題番号(1)の設定

先ほど大問の番号を設定しましたが、次は小問の番号の設定です。

LaTeXには綺麗に箇条書きをしてくれる「enumerate」というコマンドがあります。これを小問番号として利用します。しかし、enumerate環境は、1. 2. 3. …のように「番号.」で表示してしまいます。大学入試に限って言えば、ほとんどが(1) (2) (3)…のように括弧のタイプです。

そこで、enumerate環境を括弧に変更するコマンドを書いておきます。このコマンドをプリアンプルに書いておけば、あとは問題番号を書くときにはenumerate環境で書けば、自動で(1) (2) (3)…と番号を振ってくれます。

\setlist[enumerate,1]{label=(\arabic*),topsep=0pt,parsep=2pt,partopsep=0pt,itemsep=0pt,leftmargin=3em,labelsep=1em}%enumerate第1レベルの設定

あとは正直あまり使っていない

残りはあまり使っていないコマンドです。段組み短縮コマンドは、段組を簡単にできるようにするコマンド、ワンポイントコマンドとコメントコマンドは、引数としてコメント等を書くことでいい感じの補足事項らしい文章が書けるコマンド、noteコマンドは、左右の区切りをよくするためにノートを入れられるコマンドです。

\newcommand{\dan}[2]{\begin{multicols}{#1} #2 \end{multicols}}\multicolsep = 3pt%段組み短縮コマンド\newcommand{\op}[1]{\begin{thmbox}[M,leftmargin=3\zw,thickness=0.8pt]{\colorbox[gray]{0.85}{\textgt{ワンポイント}}}#1\end{thmbox}}%ワンポイントコマンド\newcommand{\cm}[1]{\begin{thmbox}[M,leftmargin=3\zw,thickness=0.8pt]{\colorbox[gray]{0.85}{\textgt{コメント}}}#1\end{thmbox}}%コメントコマンド\newcommand{\note}{\newpage\begin{center}\Large{N~~O~~T~~E}\end{center}\newpage}%NOTEコマンド

今回はサンプルも多用しながら大学受験のテキストをLaTeXで作成する例を書いてきました。この記事を参考に、少しでも負担を少なくしてみてくださいね。それでは。

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